頭や心で納得すると症状(痛みを含む)が落ち着く

やはりカラダとココロは繋がっている

今回はそれを再認識させられた事例でした。

その症状、恐怖や不安がカラダに居残っているからかも。

 恐怖や不安が身体に居残っていて、症状が抜けなかった話。

3年ほど前に左耳の突発性難聴を発症された保育士さん。現在は左耳はほぼ聞こえない、右耳に頼っている状態(右耳も聞こえづらい)です。

保育園の節分で鬼のかぶり物をして、園児に見つからないよう、真っ暗な場所で待機していた時のこと。

真っ暗で静かなため、自分がどっちを向いているか分からなくなり、一時的に平衡感覚を失ってパニックになりそうな恐怖感に襲われたようでした。

その日から強いめまいが再発したようで、ご来院となりました。 

不安感や恐怖感は、ヒトが自分の命を守るために必要な感情

早速、触診をして反応のあった部位を施術するも、反応が悪い。

今までもめまいで来院されたことがありましたが、施術で自律神経系が改善すると体の緊張感がゆるみ、耳詰まりがぬけ、めまいが落ち着いていました。しかし今回は何かが引っかかって身体が緩まない。

たとえると、鍵穴にカギは入るがうまく回らない状態

そこで、もう一度問診を振り返ると、パニックになりそうな恐怖感に襲われた。そこがいつもと違っている。

いつもは日常生活で感じる疲れやストレスが原因となっていた。だが今回は《パニック・恐怖感》が引き金となっている点で違いました。

不安感や恐怖感は、ヒトが自分の命を守るために必要な感情です。しかしそのスイッチが入り続けると、カラダもココロも緊張状態がつづき、身体を壊してしまいます。痛みとして出る場合もありますが、今回はそれがめまいとして出てきたんですね。

そして頭のタッチ治療に切り替えてみる。まず側頭部をするも右耳の周りに手が来るのが、嫌。(さらに右側に立たれるのも嫌。)

ご本人曰く「右耳で状況判断しなければならないので、その耳の周辺に手がくると圧迫感がする。」と。普段は側頭部の施術をしても大丈夫ですが、今日はやはり五感が敏感なようでした。

ということで、頭頂部と横隔膜のタッチ治療に切り替えてみた。その瞬間から「今日の治療の中でいちばん楽です」と。

やったー!と思ったのもつかの間。

次は右手右足のしびれが始まり、呼吸が乱れ動悸もしはじめる。

「いちばん楽」なのになぜ?でもパニックになりそうではなかったのでもう少し続けてみる。 

私「ちなみにこの右手右足のしびれは、当日に出てませんでしたか?」と質問。

ご本人「そう言えば、当日のその後に同じ場所に同じしびれがでました。そして右顔の皮膚もビリビリしていました。」と。

このしびれ・皮膚のビリビリ感は、3年前に悪くした左耳(ほぼ聞こえない)、その後に悪くなった右耳(聞こえづらい)に加え、鬼のお面をかぶって真っ暗の場所での待機により視覚まで制限されたため、空間認識を聴覚・視覚以外の触覚や嗅覚ですべて判断しなければならなくなり、敏感を通り過ぎ過敏状態になったことが、皮膚のビリビリ感に繋がった。

これは何も特別なことではありません。実は私も同じ体験をしましたので。

ある治療技術セミナーにて、目隠しをした状態でペアに体を誘導してもらうというワークがありました。周りに障害物が置いてあり、それをペアの方が避けながら誘導します。また周りの人間がボールや小物を投げて音を立てるんですが、自分にあたる訳ではないのですが、視覚が塞がれているため、他の五感(特に聴覚・触覚)が情報をフルにキャッチしようとしていました。

そのワークをしている最中から、皮膚がビリビリ痛んだり、耳の奥が過敏状態(音を拾い過ぎてしんどい)になりました。そして心拍数も上がり、動悸もするししばらくはめまいもしていました。この状態と同じことが起こっていたと考えられます。(経験しておいて良かったです。)

右手足のしびれも同じでパニックになりそうな恐怖感で一気に過度の緊張状態になったことで、交感神経が非常に強く働いたため、筋肉や神経が緊張状態になりしびれたと推測できました。

それをゆっくり説明すると、だんだん右手右足のしびれ、呼吸の乱れ、動悸も落ち着き始めました。

あ~良かった。(ご本人さんもですが、僕も同じ気持ち)

今回のようにいろいろ試して症状が動かない(反応が悪い)場合は、心の奥で何かが引っかかって解放したくない、してはいけないと無意識で思っている場合があります。

うまく引っかかりが取れれば、患者さんから症状が抜けていきます。(問題が複雑に絡み合っている場合は心理カウンセリングの専門家にお願いしたほうがいいでしょう。)

今回の場合は信頼関係もあり、複雑でもなさそうな問題だったので、上記のようにゆっくり説明することで、納得・合点がいき、安心や気持ちの中での整理がついて、しびれ・呼吸・動悸が落ち着いたと思います。

症状(痛みも含む)が楽になるには、もちろん施術により体に変化をつけることでもありますが、やはり頭や心で納得するということは治療の1と再認識させられる事例でした。

慢性的な症状はカラダの不安や恐怖が影響していることも

ちなみに慢性腰痛などのよくある慢性的な痛みも同じことが言えます。先述したように不安感や恐怖感は、ヒトが自分の命を守るために必要です。日々の疲れ・ストレスが積み重なると、それ単体は小さなものでも身体は確実に緊張状態になっています。

つまり体が不安や恐怖を感じている状態です。そして症状(痛みを含む)として出始める。さらにその不安・恐怖状態を解消できなければ、症状(痛みを含む)が脳に記憶(居残って)されて慢性化していきます。

(自覚していない人も多い。こんな人は「急に体を壊した」というが、その前から身体はすでに決壊寸前の表面張力状態だったんですね。)

その前に、まずそんなことが体で起きていることを知っていただき、カラダとココロを休ませる。軽い運動やヨガ、気分転換になる趣味・遊びをすることをおすすめします。

それでもうまくいかないなら当院へお越しください。(宣伝!)

今日は3連休の最終日、この患者さまも楽になっていて素敵な1日を過ごされていればいいなと思います。

長い息は、長生き。

この記事を書いた人

吉村 徳介

鍼灸師・柔道整復師の国家資格をもつ整体師。2児の父。
自分自身が悩まされた経験から《自律神経失調症・めまい・うつ・パニック症》の治療が得意。「自分でも治せればもっとハッピー!」をテーマに患者さんにセルフケアの指導にも力を入れている。